「NPOとNGO、結局のところ何が違うのか」という疑問を持ったまま、なんとなく使い分けている方は少なくありません。実は、この2つの言葉の関係性は、多くの方が思っているよりもずっと複雑で、しかも興味深いものです。
個人的にボランティア活動や社会貢献の分野に関わってきた中で気づいたのは、現場で活動する人たち自身でさえ、両者の境界を厳密に意識していないことが多いという事実でした。
この記事では、定義の違いから法的な扱い、収入構造、そして「営利を出してもいいのか」という素朴な疑問まで、NPOとNGOにまつわる本質的なポイントを整理してお伝えします。
この記事で学べること
- NPOとNGOの違いは「対立関係」ではなく多くは重なり合う関係である
- NPO法人は都道府県の認証が必須、NGOには法的登録義務がない
- NPOも利益を出せるし、スタッフが給料を受け取ることも可能
- NPOの収入は事業収入50%・寄付30%・会費20%が一般的な構成
- 特定非営利活動法人は17の活動分野に限定して活動できる
NPOとNGOの正式名称と本質的な意味
まず、それぞれが何の略語なのかを確認しておきましょう。
NPOは「Non Profit Organization」の略で、日本語では非営利組織と訳されます。一方、NGOは「Non Governmental Organization」の略で、非政府組織を意味します。
つまり、NPOは「利益を目的としない団体」、NGOは「政府に属さない団体」という、そもそも分類の切り口が違う言葉なのです。
ここが最初のつまずきポイントです。NPOとNGOは対立する概念ではなく、視点の異なるラベルにすぎません。同じ団体が、ある文脈ではNPOと呼ばれ、別の文脈ではNGOと呼ばれることも珍しくないのです。
NPOとNGOの主な違いを一目で比較

両者の違いを実務的な観点から整理すると、以下のような対比が見えてきます。
NPOとNGOの実務的な違い
ただし、こうした違いはあくまで一般的な傾向であって、絶対的な区分ではありません。
「NPOは国内、NGOは海外」は本当か
日本で最もよく聞く説明が、「NPOは国内活動、NGOは国際活動」というものです。
確かに、現場の感覚としては大きく外れていません。
しかし正確に言えば、これは正しくないのです。NPOも海外で活動できますし、NGOも国内で活動しています。実際、国際協力を行うNPO法人は数多く存在しており、両者の境界はかなり曖昧です。
多くの団体は「NPOであり、かつNGOでもある」
少し意外に思われるかもしれませんが、ひとつの団体がNPOとNGOの両方に該当するケースは非常に多くあります。
たとえば、国際協力に取り組む特定非営利活動法人は、「非営利」という意味でNPOであり、「非政府」という意味でNGOでもあるわけです。どちらの呼び方を使うかは、その団体がどの側面を強調したいかによります。
NPO法人とNGOの法的な扱いの違い

もっとも実務的に重要な違いが、法的な位置づけです。
NPO法人は都道府県の認証が必要
「NPO法人」と名乗るには、特定非営利活動促進法に基づいて都道府県または指定都市から認証を受ける必要があります。
主な要件は以下のとおりです。
NPO法人設立の主な要件
さらに上位の「認定NPO法人」になると、寄付控除など税制上の優遇措置を受けられるようになります。
NGOには登録義務がない
これに対してNGOは、特定の法的枠組みを持たない、より緩やかな概念です。
日本国内には100万を超えるNGOが存在するとも言われていますが、その多くは正式な登録を行わずに活動しています。個人レベルで活動する場合は「NGI(Non Governmental Individual)」と呼ばれることもあります。
つまり、NGOという呼称は「政府でない団体・個人」という広い意味であり、登録の有無を問わないのです。
特定非営利活動の17分野とは

NPO法人が活動できる分野は、法律によって17に限定されています。
この点は意外と知られていません。
NPO法で定められた特定非営利活動の分野
- 保健・医療・福祉の増進
- 社会教育の推進
- まちづくりの推進
- 学術・文化・芸術・スポーツの振興
- 環境の保全
- 災害救援活動
- 地域安全活動
- 人権擁護・平和の推進
- 国際協力
- 男女共同参画社会の形成
- 子どもの健全育成
- 情報化社会の発展
- 科学技術の振興
- 経済活動の活性化
- 職業能力の開発・雇用機会の拡充
- 消費者の保護
- 上記活動を行う団体の運営・連絡・助言・援助
この17分野の中に「国際協力」も含まれているため、国際的に活動するNPO法人がNGOと呼ばれるのは自然なことなのです。まちづくり分野の取り組み事例を見ると、地域に根ざしたNPOの実像がよくわかります。
「非営利」の本当の意味と利益の扱い
ここで、最も誤解されやすいポイントに触れておきたいと思います。
利益を出すこと自体は問題ない
「非営利」という言葉が誤解を生んでいるのですが、NPOも事業活動を通じて利益を生み出すことは認められています。
禁じられているのは、その利益を構成員や役員に分配することです。株式会社の株主配当のような仕組みは認められません。
得られた利益は、団体のミッションを推進するための活動費として再投資される必要があります。
スタッフに給料を支払うのも合法
同じく、NPOで働くスタッフが給料を受け取ることも全く問題ありません。むしろ、専門性を持った人材を継続的に確保するためには、適正な報酬を支払うことが不可欠です。
給与水準の実態については、NPO法人の給料相場と仕組みでより詳しく整理しています。
NPO法人の収入構造を可視化する
「非営利団体はどうやって資金を確保しているのか」という疑問もよく聞かれます。
一般的なNPO法人の収入構成を見ると、次のような割合になっています。
NPO法人の収入源構成(典型例)
事業収入が約半分を占めることは、多くの方が想像している姿と違うのではないでしょうか。NPOは寄付頼りの団体ではなく、自前で稼ぐ事業体としての性格を強めています。
NPOとNGOに共通する本質
違いを整理してきましたが、両者には大切な共通点があります。
どちらも民間が主体となる非政府の組織であり、公益のために活動する団体です。社会問題の解決、地域のニーズへの対応、自然環境や文化財の保全など、利益追求を第一の目的としない点で一致しています。
「ボランティア団体」とまとめて呼ばれることが多いものの、専門性の高いスタッフが従事するプロフェッショナルな組織も多く、活動の種類や参加方法は驚くほど多様です。
NPOとNGOに関するよくある質問
NPO法人と一般社団法人はどう違いますか
どちらも非営利の法人格ですが、NPO法人は特定非営利活動促進法に基づき17分野に限定して活動します。一般社団法人は活動分野の制限がなく設立手続きも比較的簡便ですが、認定NPO法人のような寄付税制の優遇は標準では受けられません。
認定NPO法人と通常のNPO法人の違いは何ですか
認定NPO法人は、運営の適正性・公益性が一定基準を満たすとして所轄庁から認定された団体です。寄付した個人や法人が税控除を受けられるため、寄付を集めやすくなる大きなメリットがあります。
NPOで働く場合、給料はどのくらいですか
団体の規模や役職によって幅がありますが、一般企業より若干低めの傾向はあるものの、生活が成り立つ水準の給与を支払う団体は数多くあります。事業収入の安定した団体ほど待遇は良くなる傾向です。
NGOになるための手続きはありますか
NGOには日本において定められた登録制度がないため、特別な手続きなく自称することが可能です。ただし社会的信用や寄付集めの観点から、多くは特定非営利活動法人や一般社団法人といった法人格を取得しています。
個人でNPOやNGOに関わるにはどうすればいいですか
会員として年会費を支払う、寄付で支援する、ボランティアとして参加する、職員として働くなど多様な関わり方があります。ボランティア活動の基礎情報から確認すると、自分に合った関わり方が見えてきます。
まとめ・違いを理解した次の一歩
NPOとNGOの違いは、「対立する2種類の団体」ではなく、同じ非政府・非営利の領域を異なる角度から見たラベルであることがお分かりいただけたかと思います。
NPO法人として認証を受けるか、NGOとして自由度高く活動するかは、その団体のミッションと規模、社会的信用の必要性によって選び取られていきます。呼び方の違いに惑わされず、活動の中身と運営の透明性を見極める視点こそが大切です。
関心のある分野が見つかったら、まずは小さく寄付やボランティアで関わってみることをおすすめします。現場に触れることで、書籍やWeb情報では得られない実感が得られるはずです。
